2025.8.20
国語科で「映像をよむ」挑戦
F.ラボは、2025年2月、大阪教育大学附属天王寺中学校にて、授業プログラムを実施しました。今回の授業プログラムには、ひとつ大きな特徴があります。
それは、国語科で「映像をよむ」授業と、美術科で「映像をつくる」授業を組み合わせた、教科を越えたプログラムだということ。
言語を扱う国語科で、非言語も含めた映像表現を読み解き、
表現を扱う美術科で、非言語だけの映像表現をつくる。
「よむ」と「つくる」の往還によって、子どもたちにどんな変化が生まれるのか。2回にわたって授業のレポートをしていきます。本記事では、国語科で取り組んだ「映像をよむ」授業について取り上げます。
国語科の授業を担当するのは、伊藤博紀先生。今回の授業で扱われた単元は「多様なモードで物語を表現する」です。映像作品を読み解くことを通して、物語を構成するさまざまな要素に目を向け、構造的に物語を捉える力を育てることが目標とされています。
(左)美術科 宣 昌大先生 (中央)山﨑カントク (右)国語科 伊藤博紀先生
単元は大きく2部構成となっています。
1次は「映像をよむ」体験編。新海誠監督のアニメーション映画『言の葉の庭』(13)を視聴し、「映像をよむ」体験を行います。言語表現だけではなく、構図の決め方(撮影技法)・編集技法、色彩や明暗などの映像特有の表現など、映像特有の表現にも着目しながら、作品を読み解いていきます。
2次は「映像をよむ」実践編。同じく、新海誠監督のアニメーション映画『すずめの戸締り』(22)を視聴し、体験編で得た読み解く視点をもとにしながら、作品を分析する実践へと進んでいきます。グループで考えを共有をし自分自身の読みを深めた後、最終的には「もう一度『すずめの戸締りを見る人へ』」というテーマで作品の魅力をアウトプットする活動を行うという流れです。
伊藤先生が教材に長編アニメーションを選んだのは、情報が溢れる現代において、生徒たちは日常的にスマートフォンやSNSを通じて、言語だけではない画像、音声、動画など複数の情報伝達手段を組み合わせた表現(マルチモーダルテクスト)に触れているからです。だからこそ、国語の授業でもそうしたマルチモーダルテクストを読み解く力=リテラシーを育むことが必要だという、強い問題意識があったそうです。
題材に選ばれたのは、新海誠監督のアニメーション作品『言の葉の庭』と『すずめの戸締まり』。新海作品の特徴は、「言葉で語ってくれない」こと。つまり、台詞や語りだけに頼らず、構図の決め方や光の影の加減、編集の切り取り方といった非言語的な要素に込められた意味を、こちらから読み解いていく必要があるのです。
たとえば、登場人物の間に引かれた一本の線。それは2人の心理的距離や関係性の変化を象徴しています。台詞だけに注目すると人物同士の心が通い合いそうな場面に思えますが、画面上では2人の間に木の枝がピン送り(画面を固定したまま、ピントを被写体の手前から奥、または奥から手前に移動させること)で浮かび上がり、あえて視線を遮るような「引き裂く構図」が描かれる。そこには、言葉では表しきれない複雑な2人の関係が表現されています。
他にも、登場人物の立場や心情が、画面上の配置に反映されていたり、物語の転換点やクライマックスが天気によって象徴されていたりと、視覚的な演出が物語の深い読みへと誘います。
何度も同じ場面を繰り返し見ながら、読みを深めていく
言語だけではない、非言語の表現を味わうことで、段々と映像をよむ面白さに引き込まれていく子どもたち。授業を通してこんな変化を感じられたようです。生徒の感想を紹介します。
「印象に残ったことは、男の子と女の人を木の枝が切り分けるところ。あれを普通に見ていたら、なぜ二人ではなく、枝にピントを合わせるんだろうと思っていたと思う。これから映画を見る時、一つ一つのシーンに何時間も時間をかけて作っていてたくさんの仕掛けがあると思うので、不自然なものにピントが合っているところや、天気、景色などに注目して、セリフの抑揚だけでは表せない演出についても深く考えながら見ようと思いました」
「作品の細かいところまでに仕掛けが設定されていて、必要がないだろうと思われがちな背景が単なる脇役ではなくこの後に起こる出来事を表しているところが印象に残りました。これから映画を見る時は、背景や映している目線などの部分にも気をつけてみようと思います」
「美術で習ったローポジションやナメるの仕方をしっかりと分かってから映画を見たいです。以前、宣先生がおっしゃっていたように、『映画ってたまたま映りこんだものなんてない』と改めて思います。たったあり一匹だって意図があって書かれている。100%意図があって写してるのは当たり前。今はまだ『君の名は。』を少しずつ分析してるんですけど、初見で分析できるようになりたいです」
国語の授業の最後に、参観していたカントクから一言。
「監督って、作品の中にいろんな仕掛けを入れています。それをひとつひとつ紐解いていくと、作品の魅力がぐっと増すんです。
今日は非言語表現を言語表現にして読み解く授業をしました。来週の美術では、反対に言語で出されるお題を、非言語の映像表現にしていく授業をします」
「よむ」と「つくる」を往還する学び。
次回は美術科「映像をつくる」授業のレポートをしていきます。